Sea trace

Sea trace Sea trace (2021.11.23.厳島) 2022-6 M10

Sea trace photo:KATO Ken

「Sea trace」は、厳島で見た夜明け直前の青い海景からインスピレーションを得た。現代の文明生活を享受している私が東アジアの伝統的な絵画の文脈に則った手法を採用することで、自然を媒介としながらその背後に潜む世界の無限性を想起させる「幽玄」を現代的に表している。
作品に用いられている群青(azurite)や和紙などの材料は、伝統的な自然由来の素材であり、作品と自然との連続性を担保している。また、特定の土地で採取した海水を絵具に混ぜることで、作品に風土性や自然との関係性を明示しようとしている。また、制作者自身が現地に赴いたという身体性や具体性を作品に与えるために、タイトルには使用した海水の採取地と日時を記載している。

Khora

Khora Khora 2023-16 P10

Khora

風景や景色の見方は文化や時代によって異なる。
例えば西洋では風景をオブジェクトとして捉え、東洋では理想郷を臥遊する山水画が成立していた。
では、そのように文化によって差異が生じる以前の、風景を知覚する原初の形は何だろうかと調べていたところ「Khora(Khôra,コーラ)」という言葉に巡りあった。「Khora」とは、プラトンの『ティマイオス』に登場する概念で、理解するのが困難だが「存在が存在するための場」といった意味だと解釈した。
この概念を参照し、西洋文明の近代化によって生まれたアルミニウム(=西洋文明の象徴)を材料にして、東洋の伝統的な絵画技法の筆法の練習線と琳派等で使われたたらし込みの技法(=東洋文化の象徴)を組み合わせた絵画空間を制作した。
具体的には、アルミニウム粉末で筆法の練習線をひいた上に墨をたらし込んだ筆跡を幾重にも描き重ねている。アルミニウムの金属光沢が作品を見る角度によって多様な見え方をもたらし、たらし込みによってより複雑で角度によって一貫しない画面となる。そのため鑑賞者によって異なる見え方を示し、光や環境の変化によっても印象が変化する。これらは、東洋と西洋、文明と自然などの多様な要素が対立せずに同居することが可能な絵画空間を表現するために用いられている。

遊心方外

遊心方外 遊心方外 2023-3 F6

遊心方外 遊心方外 2023-2 F6

水墨画の概念を取り入れて自然な滲みやしみを満開の桜や散る花びらに見立てた作品。平安時代の歌人、西行法師の和歌から想起される、現在いる場所とは異なる場所へ行ってしまうようなイメージや、実際に桜の時期の吉野への取材から湧き上がってきた胸中の「花の雲」の印象を絵画化することを意図している。
そのため作品は明確な描画をせず、絵の具の流れや自然にできた滲みを生かし、自身の意識を超えたところに立ち現れる表情を見せるようにしている。また、滲みを生かすため、素材は和紙や胡粉といった自然由来の日本の伝統的な画材を使用している。
具体的には、胡粉を塗った画面を水で湿らせ、その上に絵の具をのせた時に広がる滲みをそのまま、あるいは乾いた後に絵の具を落としたりしながら画面全体のバランスをとって完成としている。
このような制作方法は、レオナルド・ダ・ヴィンチや土佐光起らの染みや余白に関する絵画論(レオナルド自身は否定的に語っているが)を積極的に肯定し、現代的な美意識に生かそうとするものである。

風早

風早

風早

道路や電線が同居する歌枕の景色に、日本の文化と西欧の文明生活が交錯する世界を見出した。そこからインスピレーションを得て風力発電やその周囲の木々を平安時代の絵巻などに見られる白描画法で描いた。風力発電は自然エネルギーの利点や課題など様々な情報を内包する存在であるが、私は風力発電それ自体の佇まいに詩情を感じ、モチーフとしている。
基底材には書の世界で使われる料紙やファインペーパー、また一部には平安時代の古筆を再現した特注の料紙も使用している。風力発電という現代の構造物を古典由来のアイデアで描くことで、古今東西の文化文明の先にある現代的な美意識を表現することを企図している。

水辺

水辺 水辺 2022-5 P30

水辺 水辺 2022-6 P30

水辺 水辺 2022-7 F10

水辺 水辺 2022-19 F10

水辺 水辺 2022-14 F10

風景

海景 海景 2017 F6

水辺 水辺 2017-4 P30

動く森 動く森 2017 P10

hama hama 2008 F50

花の雲 花の雲 2017 F6

湧く雲 湧く雲 2017 P10

nagisa nagisa 2008 S50